8月29日(木)14:00開演 びわ湖ホール小ホール
二塚直紀と言えば「びわ湖ホール4大テノール」のメンバーである。そんな人のコンサートなら是非いかなければ、と思って行ってきた。去年は、同じく4大テノール竹内直紀のコンサートがあったが仕事が忙しくて行けなかった。今年はそれほど忙しくないので行けて嬉しい。ピアノは植松さやか。この人も4大テノールのコンサートでおなじみ。
副題に「びわ湖ホールの思い出によせて」とあり、現役時代からの思い出の曲をいろいろ歌ってくれた。最初は「オクラホマ」~ミュージカル「オクラホマ」から。この曲は、初代芸術監督の若杉弘の時定期公演で歌ったものだとか。とても楽しく、盛り上がる曲だった。
この人は先代の若杉弘氏の時に声楽アンサンブルに入っている。若杉芸術監督の時代には、声楽アンサンブルは大ホールのオペラには合唱としてしか出られなかった。それに、声楽アンサンブルのオペラ公演も子供むきばかりだった。と言話した。それでわかった。僕はこのびわ湖ホールが出来た当時から来ている。こけら落としの「NINAGAWAマクベス」もみている。できた当初は年に一回、いい芝居が来たとき中ホールに行くくらいだった。若杉芸術監督時代の大ホールのオペラはヴェルディの初期作品の本邦初演が多かった。そういうマニアックなものか、子供向き、だとあまり食指が動かないのだ。若杉芸術監督は二塚氏にとって雲の上のような人で、物腰も話し方も優しかったけど、音楽にはとても厳しい人だったと言う事だった。
沼尻竜典氏が芸術監督になって、声楽アンサンブルも大ホールのプロデュースオペラにソリストとして出られるようになったし、中ホールでも「普通の」オペラをやるようになった。僕も「ラ・フォルジュルネ」がきっかけで、びわ湖ホールによく行くようになった。
歌曲を何曲か。ベルク:「7つの初期の歌より」「夜鳴きうぐいす/室内にて/夏の日」 どれも、聞いているだけで、難しいとわかる曲だった。「夜鳴きうぐいす」は声楽アンサンブルの定期公演で歌ったとか、その時は、無伴奏で16声(!)とても厳しかった、と言う話をしてくれた。
武満徹:「小さな空」「翼」 この二曲は僕も二塚氏が卒業してから声楽アンサンブルの定期公演で聞いた。武満徹と言えば、変拍子に不協和音だと思っていたけど、とても綺麗な旋律で驚いた覚えがある。ただ、この歌はテノールの二塚氏にはちょっと音域が低いのではないかと思えた。
ベートーベン:「アデライーデ」「接吻」 来年2020年はベートーベンの生誕250年と言う事で、二塚氏は東京で「ミサ・ソレムニス」のソリストに呼ばれているので、それにちなんでと言う選曲だった。ベートーベンと言うと、たいそうな曲という感じだが、この二曲はかわいらしい親しみの持てる曲だった。
前述したように、この人は4大テノールのメンバーである。いつも4大テノールのコンサートでやっているカンツォーネを二曲、「カタリカタリ」「フニクリ フニクラ」を歌ってくれた。「フニクリ フニクラ」の前半を歌い終わると、引っ込んで・・・・もしかしたら・・・と思ったらやってくれました、かぶり物をつけて、「鬼のパンツ」! いつも4人でやっているのを一人でやるのはきつかったそうだ。
この人はオペラ歌手である。だからオペラのアリアが一番よかった。オペレッタ「ミカド」より”われこそ気ままなシンガーソングライター” 「ミカド」は2017年に中ホールで上演され、この人はこの公演でこのアリアを歌っている。僕も見ている。ジョン・レノンのつもりだっただなんてこの時初めて知った。
オペラ「オテロ」より”あなたは私に不幸のすべてを与えられた” 大ホールで「オテロ」が上演されたとき、二塚氏はカヴァーでオテロを歌っている。本編ではロデリーゴ。僕はこの「オテロ」のロビーコンサートを見ている。本編は見られなかったけど。ロビーコンサートでは、デスデモーナとの二重唱を歌ってくれた。もちろん今回歌ってくれたこのアリアも良かった。
一番よかったのは、最後に歌ってくれた「冷たい手を」~オペラ「ラ・ボエーム」より。この曲は声楽アンサンブルの入団オーディションやコンクールでも歌ったと話してくれた。とっても素敵なロドルフォだった。
例によって「第二部アンコール」(笑)、こうやってアンコールが長いのも4大テノールの特徴の一つなのだ。今回は大サービスでこの日の為に作曲家でもある植松さやか氏がオリジナル曲を作ってくれた。谷川俊太郎の詩による「がいこつ」、それから立原道造の詩で「子守唄」。二塚氏にぴったりでとても良かった。引っ込んでこれで終わりかと思ったら、また出てきてもう一曲、「ヴォラーレ」これも植松さやか氏の編曲。この編曲がとても素敵で、曲のすばらしさを改めて知った気がした。それに、テノールの二塚氏にぴったりだった。
終演後、ロビーで二人が見送ってくれた。これは「気楽にクラシック」と言う1時間だけの気楽なコンサートだけど、今回結構マニアックな曲もあり、時間も15~20分延長したが十分楽しめた。
鬼の笑う話だが、来年年明け早々4大テノールとIL DEVUの共演が大ホールで行われ、中ホールで「こうもり」が上演され二塚氏はアイゼンシュタインを歌う事になっている。両公演が今から楽しみだ。
これが気に入ったら下記を「ぽちっとな」とクリックしてください