連休2日めの朝はびわ湖ホールから。楽しみにしていた「びわ湖ホール四大テノール」のコンサート。僕が見始めてからこの音楽祭では中ホールで公演があり、毎回大入りだ。去年と同じく中ホールで開演は10時、これ歌手にとってはつらいのではないだろうか。それでも、精一杯舞台を務める姿に感謝の念を惜しむことはない。ピアノはいつもの植松さやか。
オープニングはベートーベンの第九。それから、それぞれのソロ。最初は宗教音楽を二曲。ヴェルディ:「レクイエム」から”私は呻きます” 独唱は二塚直己、それから、ロッシーニ:「スターバト・マーテル」より”悲しみに沈むその魂を”、独唱は山本康寛。朝早くから高い声を出してホント、大変ですね。
それからおなじみオペラのアリア。ヴェルディ:「椿姫」より”燃える心を”、独唱は清水徹太郎、プッチーニ:「トスカ」より”妙なる調和”、独唱は竹内直己。これが聞きたかった。やはりこの人たちはオペラ歌手なのだ。聴き応えがある。
四大テノールのコンサートと言うとこれが名物。そう「テノール de コント」。今回は「テノーレ戦隊ヒビクンジャー」のお披露目、と言う趣向。「オペラ歌手と言うのは仮の姿、実は、我々は戦隊なのです」と言う言葉に客席から脱力したような笑いが漏れる。そこがおもしろいのだ。戦隊の格好までしてくれて大サービス。それにしても着替えが早いな、と思ったら燕尾服の下にあの戦隊の服を着ていて暑かったとか。お疲れ様でした。最後は、カンツォーネメドレー、それから、「オー・ソレ・ミオ」、4大テノールのコンサートの最後はこれでないと決まらない。最後は、全員客席を通って退場。とても、楽しいひとときだった。
一旦帰宅して、今度は小ホールの「ふるさとの歌・恋の歌」と題した福井敬のリサイタルを見た。これが絶品だった。始めは、詩:三好達治 曲:中田義直「木菟(みみずく)」、詩:石川啄木 曲:越谷達之助 「初恋」。福井敬氏の話によるとこんな音楽祭をやっているのは日本でもここだけだそうだ、そう言われるとちょっと誇らしくなる。それから、寺山修司の詩に中田義直が曲をつけた「悲しくなった時は」。あの「身毒丸」とは全然と言っていいほど違う。絶品だったのは、さだまさし作詞作曲の「秋桜」。言わずと知れた山口百恵の歌だが、百恵ちゃんともさだまさしとも違った歌い方で、この歌のすばらしさを別のやりかたで示してくれた。オペラ歌手がこういう歌を歌うと単にたいそうなだけ、になってしまうのかも、と心配だったが杞憂に終わった。客席では、目頭を押さえる女性が続出。最後はイタリア語の歌を。P.チマーラ:海のストロネッロ、ヴェルディの「運命の力」からテノールのアリア「天使のようなレオノーラ」。
特筆すべきは、共演者川原忠之のピアノ。この人は「伴奏」ではなく「共演」だ。それくらい彼のピアノは素晴らしい。歌手からひっぱりだこだと言う話もうなずける。この人のピアノは、提灯で歌手をこっちでっせ、と道を照らしているような感じがする。まるで義太夫節の三味線だ。そう、この二人の共演はまるで素浄瑠璃だった。ただ、ちょっと気になる事が。太りすぎて、手を交差させて弾くところがちょっと苦しそうなのだ。マニア受けも結構だが、ちょっとは気をつけては如何だろうか。
アンコールに「落葉松」を歌ってくれた。これがまた絶品で、この歌のすばらしさを再認識させられた。何故「わたしの 乾いた眼が濡れる」のかわかったような気がした。
続く
これが気に入ったら下記を「ぽちっとな」とクリックしてください