お正月の松竹座の歌舞伎は夜だけ見てきた。観劇日は5日(土)、まだお正月休みのところもあり、土曜日の夜で、結構入っているが、満席、とまではいかなかった。席はいつもの三階三等席。
松竹夜の部は、通し狂言、いつもは「南禅寺山門」しかやらない「金門五三桐」を全部やってくれた。発端「玄海ヶ島」はまるで「俊寛」。舞台奥に見える海の上を小さい船が通りすぎていく。すると、大きな船が舞台上手に着いて人がその船から下りてくる。そう、この芝居、「どこかでみたような話」の寄せ集めなのである。いろんなところから「おいしいところ」ばかり集めてきて、それを「石川五右衛門」と言う箱に流し込んで固めて一本の芝居にした、と言う感じである。
次の場面は「お家騒動」、真柴久吉の次男久枝(笑也)は久吉の跡継ぎに定められたが島原遊郭で遊女におぼれ放埒三昧、しかし、それは兄久次(猿弥)に跡を継がせたいから、と言う話。ここに石川五右衛門が絡んでくる。
南禅寺山門の場をこの通し狂言の中で見ると、なるほどよくわかる。なぜ、白い鷹が急に現れるかがよくわかる。それに、ここで出てくる久吉が伏線になっている。
最大の見所は、石川五右衛門(愛之助)の宙乗り、葛籠抜け。これは今まで見てきた「石川五右衛門もの」と同じだが、結構見応えがある。役者でいいのは、もちろん、主演の愛之助。ただ、前半で老け役をやるが、似合わない。それにこの芝居、「三代目猿之助四十八撰の内」とある。だから三代目猿之助の弟子が良いできだ。特に、猿弥、笑三郎(比川大炊之助妻呉竹)が良い。吉弥が二役、最初の久吉妻は堂々たるものでなかなか良いが、もう一役老け役のお幸はあまりよくなかった。
歌舞伎や文楽がわかりにくいと言われる原因の一つが、「おいしい」ところしかやらないから全体がどういう話かよくわからない。と言う事。今回の通しは、さまざに張られた伏線が、最後に回収されるところがみどころにもなっている。こういうような芝居がまたみたい、と思わせるところがよかった。
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