今年の歌舞伎の巡業、びわ湖ホール公演(9月23日、僕が見たのは昼の部)は、愛之助主演で、「義経千本桜」の「道行」、と「四の切り」。愛之助は道行なら何度か経験済み、吉弥の歌舞伎鑑賞教室でも踊っていた記憶がある。四の切りは初役。この難役をどうこなすのか、見てきた。
この公演はいつもの中ホールで行われた。ホールに入ると、定式幕が引かれている。まずは「道行」。今回は、清元と竹本の掛け合いだ。「恋と忠義はいずれが重い」と言う語り出しは清元、竹本が出るのは戦物語から。
最初に出てくるのは静御前(壱太郎)。これはいつもの通り花道から。忠信は南座や松竹座だとスッポンから出てくるのだが、スッポンのないびわ湖ホールでどう出すのかと思ったら、暗転にしてだしていた。それはそれで良いと思う。ただ、壱太郎が良くない。なにか芯がないようは、ふにゃふにゃくねくねしているのだ。いくら、女方でもそれはないだろう。逸見藤太から女武者にみられるのだからもっときっぱりはっきりしたところが欲しい。
きっぱりはっきりして、なかなか良いできなのが、愛之助の忠信。手に入った感じでよく出来ている。特に良いのが戦物語の所。猿弥が逸見藤太で出てきて、これまた上出来。最後は三人が絵面に決まって幕が引かれる。こんな幕切れも面白いと思わせる出来だった。
次は「四の切り」最初に出てくる、寿治郎の川連法眼と吉弥の飛鳥がなかなか良い。寿治郎は、番附によると初役だけでなく四の切りに出るのが初めてだとか。しかし、そうは思えないほどの出来である。ただ、次に出てくる門之助の義経が良くない。通り一遍なのだ。この役はやりようによっては良い役なのに、惜しい事だ。
四天王の猿弥、松江、がなかなかの出来。愛之助の忠信は本物の忠信が良い。刀の下げ緒を持つところ、引っ込みの表裏表と決まるところ、なかなか上出来だ。しかし、狐になってからの忠信がもう一つ。ケレンをこなすのに精一杯で情愛が客席まで届かない。この演目は、誰のを見ても、猿之助、勿論三代目、が良かったとしか思えない。この演目は何度も見ているから、ケレンもよく知っている。しかし、猿之助がやると、見慣れた事でも、はっとするのだ。まぁ、これを言ってしまうと、何を聞いてもマリア・カラスは良かったと言うオペラマニアを笑えないが。
今回は音羽屋型だった。最後も下手の桜の木に上がって終わる。全体として愛之助はよくやったとは思う。この「四の切り」とはなんと難しい演目か、再認識した。また、巡業でスッポンなどいろいろな仕掛けが使えないなか、なかなか面白く見せているとも感じた。
僕の見た昼の部は、よく入っていたが、満席ではなかった。二階席の後ろの方に、大向こうの人がいて声をかけていた。やはり歌舞伎は声がかからないと、魅力が落ちる。
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