宝塚大劇場に柴田作品が帰ってきた。この「凱旋門」は18年ぶりの再演で、宝塚歌劇では大変珍しく、18年前と主役は同じく轟悠である。原作はエーリッリ・マリア・レマルク、代表作である「西部戦線異状なし」読んだ事があるけど、この「凱旋門」は未読である。脚色は柴田侑宏、演出・振り付けは謝珠恵、作曲は寺田瀧雄、指揮は次のショーもおなじく塩田明弘。
柴田侑宏と言う人は非常に男性的な人だと思う。以前見た「琥珀色の雨にぬれて」が典型的な例だが、男役が中心、のように見えてどれも「 Femme fatale と彼女に振り回される男の話」になっている。そう考えると、源氏物語で何故トップ娘役が演じたのが紫の上ではなく藤壺だったのがよくわかる。
舞台は1938年のパリ、ちょうど第二次世界大戦直前だ。アールデコの時代だから、衣装が凝っているかと思えばそうでもない。ただ、あの時代らしい感じは出ている。この時代、パリにはいろんな亡命者がいた。ロシア革命から逃れて来た、スペイン内戦から逃れて来た、ドイツからナチスに追われてきたなど。そのナチスに追われて来たのが専科から来演の轟悠演じる今回の主人公ラヴィック、その友人でロシアからの亡命者ボリス・モロゾフを演じるのが雪組トップの望海風斗、トップ娘役の真彩希帆が演じるのはイタリアから来たジョアン・マズー、彼女がセーヌ川にかかるアルマ橋でラヴィックと出会ったところから話は始まる。
ラヴィックやボリスなど亡命者を泊めている Hotel International の女将に美穂圭子。彼女の歌を聴けるのは嬉しいが、独立したナンバー(アリア)になってないのが惜しい。又、フランス語で歌うところが出てくるが、カタカナを読んでいるようにしか聞こえない。英語・フランス語はそれらしく聞かせるのが難しい。なにもそこまでしなくても、と思ってしまった。また、シャンソンが引用されているのが良かった。僕が聞き取れたのは、「待ちましょうJ'attendrai」だけだったけど。
今回特に印象に残ったのは、寺田瀧雄の音楽の素晴らしさだ。この音楽を聴いているだけで、フランスを、パリを感じる。アコーデオンを多用した楽曲はいかにも日本人が思い描くパリ情緒を的確に表現している。それらの楽曲だけでなく、ティンパニのソロで緊迫感を出すところが素晴らしい。この楽曲の素晴らしさを表現するために塩田明弘を呼んできたのは正解。今回もドラマティックな音楽を聴かせてくれた。
主演の轟悠は、声が出ていない。しかし、存在感を演技力だけで見せていて十分納得させるだけの出来になっている。望海風斗のボリスはこの芝居の狂言廻しでもあるが、なかなか好演。「妖精」ジョアン・マズーを演じた真彩希帆がこの難役に挑戦し、見事な出来であった。
続くショーは作演出藤井大介の「Gato Bonito!!~美し猫のような男~」、幕開きに驚かされた。最初にせり上がってくるのはトップの望海風斗、かと思ったが、組長の梨花ますみだったのだ。しかし、彼女の歌声はなかなかのもの。いわゆるラテン、「黒塗り」のショーだが、結構楽しめた。塩田明弘が軽快なダンスナンバーでよく動いていた。なるほど、これをして「ダンシング・コンダクター」と巷では言われているのかと思った。でも、この程度でよく言うと思う。びわ湖ホールの芸術監督沼尻竜典がピットに入ると、マエストロ塩田よりよく動いている時がある。最後のパレードで、マエストロが背をかがめるようにしていたのは、流石宝塚の指揮者、である。
ただ、自分にとって残念なのは、6月30日と7月7日の2回観劇する予定だったが、雨の為7月7日の観劇が出来なかった事だ。6月30日は15:00からの回を見た。この時はe+の貸し切りで、開演前幕間終演後に司会者が出てきたが、彼女の話を聞いている人があまりいないのは毎度に寄って毎度の如く。最初に開演前に組長、終演後にトップの挨拶があったのは得した気分になれてよかった。
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