面白かった!!あまり上演に恵まれないオペラだが、こんなに面白いとは思わなかった。このオペラはドニゼッティ作曲で、1840年2月11日にパリのオペラコミークで初演された。この日は初演からちょうど177年目になる。
2月11日と12日におこなわれたが、僕が見たのは11日、びわ湖ホール中ホールで席は2階A列26番、最前列で中央、とても良い席だ。また僕は10日にゲネプロを見ている。ゲネプロを見た時は、はっきり言ってたいした事なかった。第一幕はこんなもんか、と言う感じ、第二幕はあっけなく終わってその上ご都合主義だと思った。しかし、11日に見た時はとても素晴らしい出来だった。
この公演は2日間で2回公演、ダブルキャストだった。11日の配役は
マリー・・・藤村江季菜、トニオ・・・山本康寛、ベンケンフィールド侯爵夫人、スュルピス・・・砂場拓也
以下は両日共
オルテンシウス・・・林隆史、農夫・公爵夫人・・・増田貴寛、伍長・・・内山建人、公証人・・・船越亜弥
山本康寛はここの「卒業生」。後はびわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーである。合唱はびわ湖ホール声楽アンサンブルメンバーと後数人客演を呼んでいる。僕が見たゲネプロは12日のキャストだった。
物語は結構単純。第一幕はアルプスの山中、だから序曲はホルンのソロから始まる。敵軍の銃声が響き、農民や女達が無事を祈っている。その中に従者のオルテンシウスを連れたベンケンフィールド侯爵夫人の姿があった。そこへ第21連隊が軍曹のスュルピスに率いられて登場、マリーも連れてくる。彼女は幼い頃連隊に拾われ娘同然に育てられた。そのマリーは崖で足を滑らせた時助けてくれた青年トニオに恋している。そこへトニオがスパイ容疑で連隊に引っ張られてきた。しかし、マリーの恩人とわかり和解。侯爵夫人が出てきて、マリーは自分の姪だとわかったと言う。トニオが現れ自分も連隊に入ったと言いアリア「今日はなんと素晴らしい日」歌う。このアリアがCが何回も出てくる難曲。侯爵夫人がマリーをパリへ連れて行って幕となる。第二幕はパリの侯爵夫人の家。スゥルピスも居て、マリーが侯爵夫人の伴奏で歌の稽古。侯爵夫人はクラーケントルプ公爵家にマリーを嫁がせようとしている。実はマリーは侯爵夫人の娘で、この結婚が自分の罪滅ぼしになると思っている。そこへ連隊が乱入してきて大騒ぎになる。マリーは結婚証明書に署名しようとするが、寸前で侯爵夫人は、娘の本当の幸せはトニオと一緒になる事と思い直して、二人の結婚を認める。というもの。
さて本番初日の11日、結構入っている。8~9割ほどの入りだ。第一幕で歌われる高いCが9回出てくる事で有名なアリア、このアリアはびわ湖ホール4大テノールのコンサートで今回もこの役を歌っている山本康寛により何度か聞いているが、今回が一番良かった。アリアが終わると拍手とブラボーが鳴り止まず、舞台の進行が止まった。第二幕では、ゲネプロで見た
「マツコデラックス」が出てきた。びわ湖ホール声楽アンサンブルの巨漢のテノール歌手増田貴寛氏が女方になって出ているのだ。でも、マツコデラックスにしか見えなかった(^0^) 全部終わった時、良く出来てる作品だと感じた。これをご都合主義と言うのは無粋というものだろう。
このオペラはテノールの難曲アリアが有名がで、あまり上演されなと言う。ドニゼッティはこのオペラを初演した歌手達と当時の観客為にこの書いた。つまり当時の歌手に「当てて」書いているのだ。初演当時のオペラコミーク一座には高いCを出すのが得意な歌手がいたのだろう。当時の観客も御贔屓の歌手が高いCを出すのに拍手喝采を送ったに違いない。ちょうど、全盛期の吉本新喜劇で岡八朗がお決まりのギャグをやると客席が沸いたり、花紀京の芸で劇場が爆笑に包まれたようなものだ。
こういう当て書きは、その当人以外がやるとしっくりこない。つまり、かつての宝塚歌劇のようなものだ。いくら名作と呼ばれ再演を望まれながらも、その役にしっくりくる人が出てこなければおいそれとは再演できない。だから宝塚を代表する作家演出家の植田神璽や柴田侑宏は作品が再演される度に脚本に手を入れるとの事だ。特にこのオペラのように歌手の高度な技術を前提とし、それが売りのオペラでは、なかなか再演できないだろう。
こう考えてみると、ゲネプロより本番が断然良かった訳がわかる。このオペラは歌手が本気を出して一生懸命やらないと生きないのだ。この作品を生かすも殺すも歌手次第。ゲネプロのキャストが手を抜いていたのではないだろう。でも、こういう人達は、本番で客席に人が入らないと本来の実力が出ないのだ。つまり、この作品は最高のエンターテインメントなのである。
追記:今回は原語(フランス語)による上演で、地のセリフが入る。そのセリフもフランス語。別にセリフは日本語でもいいのに。
追記2:第二幕で乱入してきた連隊の兵士達は、お菓子を食べたリ、腹筋したり、腕立て伏せしたり、結構好き勝手やっていた。そこがまた面白かった。また、第二幕に出てきたピアノはどこかで見た事あるな、と思ったら、ここびわ湖ホールの初代音楽監督若杉氏が使っていたピアノだった。このピアノ、彼の死後遺族によりびわ湖ホールに寄贈された。びわ湖ホールでは、公演に度々このピアノを使っている。
追記3:装置は一幕二幕共通の壁が舞台後ろの方にあって、その間からアルプスの風景、パリの情景が見える。アルプスの風景は最初の内は昼の緑一杯の景色だが、終わり近くになると、それが夕日に染まってくるのがなかなかのもの。大砲も出てきた。煙も音も結構な迫力。これジルベスターコンサートで使ったものだろう。
これが気に入ったら下記を
「ぽちっとな」とクリックしてください
観劇 ブログランキングへ